人事・労務のご相談について
会社と労働者の間で多く見られるトラブルは、退職や解雇をめぐる場合です。在職中にたまっていたあらゆるトラブルが噴き出るからです。在職中は、会社に気を使って言い出せなかったことも雇用関係がなくなると主張してきます。これは、継続的な雇用関係を通じてこじらせてきた感情的な対立が物事をより複雑化してしまうケースでもあります。しかし、誰しもトラブルを望んではいないのです。
労働基準法はこれらに対応するため労働者を雇用する際に使用者に対し「雇入れの労働条件の明示」(労基法第15条)を義務付けしております。労働条件をはっきりさせてトラブルの回避をしようとするものです。明示を怠った場合、最悪刑事処罰の対象になることもあり得ます。
労働者を雇入れる際に、書面で明示する項目はつぎの通りです。
(1) 労働契約の期間
(2) 就業場所、従事すべき業務
(3) 始業・終業時刻、超勤の有無、休憩時間、休日、休暇等労働時間に関すること
(4) 賃金(計算方法、支払方法、締め支払時期)に関すること
(5) 退職に関すること
また、パートタイム労働法の改正により、パートタイム労働者に対しては上記5項目に加え、次の3項目も義務づけられました。
(1) 昇給の有無
(2) 賞与の有無
(3) 退職金の有無
労災問題の一例
相談内容
先日、当社の女性従業員が、業務終了後に当社ビルの2階にある更衣室で着替えをして帰宅する際に、1階へ降りる途中から足を滑らせて転落し、足首を捻挫してしまいました。果たして、この様な事故も業務上災害と認められるのでしょうか?
ご回答
業務に付随する後始末行為中の災害で業務上、お尋ねのケースにつきましては、負傷された従業員の方が、階段を降りる際に特別な積極的恣意的行為(例えば、片足で飛び跳ねながら階段を下りていたなど)でもない限り、業務上の災害と認められる事になります。
この点に関しては、お尋ねの件と同様の事案に対して、次の様な行政解釈が示されています。(昭和50.12.25 基収第1724号)
当該事案は、業務終了後に着替えをすませた労働者が、作業上の入り口にある自分の名札を裏返して、それを上司がチェックした後に職場を出て、階段を下りている途中で足を引っかけて転落負傷したというものです。
この災害の業務上外認定に当たり行政は、
①事業場施設内における業務に就くための出勤または業務を終えた後の退勤で『業務』と接続しているものは、業務行為そのものではないが、業務に通常付随する準備後始末行為と認められる。
②本件災害に係る退勤は、終業直後の行為であって、業務と接続する行為と認められること、当該災害が労働者の積極的な私的行為または恣意的行為によるものと認められないこと及び当該災害は、通常発生しうるような災害であることからみて事業主の支配下に伴う危険が現実化した災害であると認められるとの理由から、業務上の災害であると判断しています。
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よくあるご相談
【 労働契約 】
Q1 当社は、労働契約書により労働条件を明示しているが、問題ありませんか。
A それで結構です。
Q2 以前から雇用しているパートタイム労働者に対し、遡って通知する必要はありますか。
A 必要ありませんが、期間雇用(数ヶ月及び1年単位)で雇用している場合は、今後、更新する場合には、必要になります。
Q3 もともとアルバイトで雇用していた労働者を正社員にしようと思いますが、このような場合、労働条件の明示は必要になりますか。
A このような場合は必要ありません。ただし、労働条件が変わるのであれば合意文書なりできっちりとしておくべきです。
Q4 実際に働き始めた後、労働条件の明示と多少異なってしまったが、そのままにしておいて問題ないでしょうか。
A 労働者は、契約違反としてすぐにでも労働契約の解約ができるので再度労働者に明示すべきです。
【 就業規則 】
Q1 当社は従業員が現在8名で、10名未満であれば就業規則の作成義務はないと聞いておりますが、作成しなくてよいでしょうか。
A 確かにその通りです。しかし後々のトラブル等を防ぐ意味において、作成すべきです。就業規則は会社の規則を定めたルールブックと考えて下さい。
Q2 就業規則は従業員全員に配布しなくてはならないでしょうか。
A 就業規則は、従業員に周知させることになっております。いつでも従業員が見れる状態であれば、配布は必要ありません。
Q3 就業規則は、どのような内容にしたらよいのでしょうか。
A 就業規則には、(1)絶対的必要記載事項(必ず記載すべき事項)と(2)相対的必要記載事項(定めをする場合に必ず記載事項)があります。
絶対的必要記載事項とは、つぎのとおりです。
①始業・終業時刻、休憩時間、休日、休暇
②賃金の決定、計算および支払方法、賃金の締め及び支払時期、昇給に関する事項
③退職(解雇を含む)に関する事項
【 時間外労働と割増賃金、その他 】
Q1 残業代について教えて下さい。
A 残業代とは労働基準法に定められた法定労働時間外に労働させたときに、割増賃金として支払うものです。
Q2 割増賃金の計算方法について詳しく教えて下さい。
A ①1日の労働時間が8時間を超えたとき・・・・・・25%
②1週間の労働時間が40時間を超えたとき・・・・・・・25%
③深夜(午後10時から翌日の朝5時)の労働時間のとき・・・・・25%
④法定休日の労働時間のとき・・・・・・35%
⑤時間外労働と深夜労働が重なったとき・・・・・50%
⑥休日労働が深夜労働であるとき・・・・・60%
Q3 当社は、休憩時間を除き1日の労働時間が7時間です。仕事の都合で7時間を超え、8時間労働することがあります。この場合残業代を支払をなければなりませんか。
A これを法内残業といい、労働基準法では特に割増賃金の支払義務は定められておりません。
Q4 当社は、月1回従業員を集めて仕事が終了した後勉強会を行っておりますが、この時間は残業代として支払の義務がありますか。
A この勉強会が会社として強制的に行われていれば時間外労働であり、任意に行われており出席は従業員の自由意思であれば、時間外労働の割増賃金は発生しません。
Q5 当社は、仕事がら終業後、後片付けに数分の時間が必要です。この時間は時間外労働になるのでしょうか。
A この時間は、時間外労働となり、割増賃金の対象となります。
Q6 当社は、時間外賃金を計算するとき、毎日の法定労働時間を超えた時間は、30分以内の場合切り捨てて計算しております。問題ありませんか。
A 時間外労働時間の計算は、原則として毎日1分単位で行わなければなりません。労働者に不利にならない端数処理として、1ヶ月の時間外労働時間を通算して30分未満の端数が出た場合には切り捨て、30分以上の端数は1時間に切り上げて計算することは認められておりますが、単純には端数を切り捨てるのは労働基準法違反になります。
Q7 当社は、時間外労働が毎日のようにありますが、注意点について教えて下さい。
A まず、所轄の労働基準監督署に「時間外労働・休日労働に関する協定届」を提出しなければなりません。この場合、労働者を代表する者の署名と押印が必要です。
1ヶ月の時間外の合計時間は45時間以内が目安となります。
Q8 当社では、月初めと月末には仕事量が増え、月の半ばは少なくなります。このため月初と月末の残業代がかさみます。変形労働時間制を利用すれば労働時間の配分を工夫できると聞きました。変形労働時間制について教えて下さい。
A 1ヶ月単位の変形労働時間制の制度があります。この制度は1ヶ月のうち1日の所定労働時間を月初と月末に長くし、1週間を平均して40時間とする方法です。変形労働時間制にはこの他、1週間単位の非定形的変形制や1年単位の変形労働時間制があります。
Q9 当社は、年次有給休暇の取り扱いについては、従業員に法定どおり与えると業務に支障が生じるので、年休を取得しない代わりに買い取りして給与として支給しておりますが、問題ないでしょうか。
A 労働基準法の違反行為になります。